どこにも救いのない、最も静かな戦争映画。75点
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あらすじ
アメリカ空軍のトミー・イーガン少佐は、F-16戦闘機のパイロットから無人戦闘機の操縦士に転身し、
政府のテロリスト掃討作戦に貢献してきた優秀な軍人である。
しかしトミーはやるせない違和感に囚われていた。
ラスベガス郊外のマイホームと砂漠の空軍基地を車で毎日往復し、
エアコンが快適に効いたコンテナ内のオペレーションルームにこもって、
圧倒的な破壊力を誇るミサイルをクリックひとつで発射する。
音声の出ないモニターだけで戦場の状況を確認するその任務は、まるでゲームのように現実感が欠落しているのだ。
CIAの対テロ特殊作戦に参加したトミーは、度重なる過酷なミッションにじわじわと精神を蝕まれ、愛妻モリーとの関係までも冷えきっていく。
やがてストレスが限界を超えたトミーは、冷徹な指揮官からの人命を軽んじた爆撃指令への反抗を決意するのだった……。
Amazonより
感想(ネタバレあり)
アンドリュー・ニコル監督とイーサン・ホークの映画ということもあって、どうしてもSF映画の名作である「ガタカ」と比較してしまう。
結論から言えば、「ドローン・オブ・ウォー」は、「ガタカ」には遠く及ばなかった。
「ドローン・オブ・ウォー」には、救いがない。
イーサン・ホーク演じる主人公のイーガン少佐は、軍に命じられるまま、無人戦闘機で毎日爆撃攻撃を行い、日に日にその精神は摩耗していく。
爆撃の対象には、明らかに非戦闘員と思われる者も含まれていたが、イーガンは命令に従い、淡々と爆撃を繰り返す。
あるとき、彼は、たった一度、軍の命令に反して爆撃を中止する。それは、非戦闘員を爆撃に巻き込まないための判断だった。
その結果イーガンは命令違反の責任を問われ、軍での昇進の道は完全に閉ざされてしまう。
イーガンの妻は、将来の展望がなくなった彼に別れを告げ、子供とともに彼のもとを去る。
あまりに救いがない。けれども、この理不尽さが「現実的」である。
終盤、妻と子に去られて一人残されたイーガンは、独断で無人戦闘機を操縦し、正義のための爆撃をする。
しかし、その行為にカタルシスはない。その後の彼の不幸が予想されるからだ。
イーガンは真面目で、家族や仕事に対して誠実であろうとするごく普通の人間である。
過酷な任務で精神的に追い詰められ、無口になったイーガンに対して、妻が「何も私に話してくれない!」と言って怒鳴り散らすシーンは、観ていてやるせない気持ちになる。
最初から最後まで、理不尽でどこにも救いがない。それがこの映画である。
劇場公開日:2014年9月5日
リリース日:2016年3月16日