罪を犯した青年の苦悩を描いた人間ドラマ。65点
感想(ネタバレあり)
アカデミー賞主演女優賞を受賞した「ルーム」の監督が2012年に撮影した作品。
映画の前半部分では主人公のリチャードを取り巻く環境や人間関係が丁寧に描かれ、後半部分ではチームメイトのコナーを喧嘩で死なせてしまったリチャードの深い苦悩が描かれる。
リチャードは何とか逮捕されずに助かりたいという考えと、チームメイトを死なせてしまった罪悪感との狭間で激しく苦悩する。
リチャードが最も信頼していた父親も、リチャードから罪の告白を受けると、その責任の重さを受け止めきれず、彼と距離を置くような態度を示す。
リチャードは深い絶望の中にありながらも、平静を装ってコナーの葬儀に出席する。
その葬儀の場でコナーの母親の悲痛な訴えを聞き、リチャードは泣き崩れる。
葬儀が終わった夜、リチャードは恋人のララに自首することを告げる・・・。
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とにかく、重くて苦しい映画だった。
視聴者はリチャードが抱える苦悩をあたかも自分の身に起こった出来事のごとく、追体験することを強いられる。
リチャードは普通の青年で、ちょっと悪いこともしたりするが、基本的に仲間思いの好青年として描かれている。
それゆえに観ている側は自然とリチャードに感情移入させられる。
リチャードはコナーを死なせてしまった後も、なかなか自首しようとしない。
それどころか友人や恋人と口裏合わせまでして助かろうとする。
当然、「リチャードはなぜ自首しないのか」という疑問が生じるが、実は、この映画はその辺りもちゃんとフォローしている。
映画の前半部分でリチャードが非常に恵まれた家庭環境で育っていることがわかりやすく描かれているが、それはつまり、自首を選択することで彼を取り巻く環境が一瞬にして崩壊することを示唆している。
それゆえに彼が自首を選択することには相当な覚悟と勇気が必要となる。
最終的に彼は自首を決意するが、観ている側としてはとりあえず「落ち着くべきところに落ち着いた」という感じでホッとさせられる。
普通はここでエンディング・・・となるが、この映画は、それだけで終わらない。
次のシーンでは、大学で講義を受けているリチャードの姿が映し出され、最後は、自宅のテーブルで何事もなかったかのように過ごす彼の姿で物語は幕を閉じる。
その間わずか2分あまり。
唐突なラストで予定調和をブチ破ろうとする監督の強い意思を感じた。
いろいろ考えさせられる内容ではあるものの、エンターテイメント性が皆無のため、とにかく観ていてしんどかったというのが正直な感想。
重苦しい内容の映画が大丈夫な人にはオススメです。
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2012年アイルランド 劇場未公開(WOWOWで視聴)