愛する息子を突然失った夫婦の心情を描いたヒューマン・ドラマ。65点
感想(ネタバレあり)
観ていて辛くなる映画なのに、最後まで目が離せなかった。
それは、この夫婦に救いが訪れるのか確認せずにはいられなかったからだと思う。
サラとフィルの夫婦は一人息子のジェシーと共に幸せな生活を送っていた。ある日、給油のために立ち寄ったガソリンスタンドでトイレに入ったジェシー。父親のフィルは、いつまでたってもトイレから出てこないジェシーを心配しドアを開ける。しかし、ジェシーの姿は忽然と消えていた・・・。
この映画では、冒頭でジェシーの失踪が描かれた後、時間が飛んで1年後の夫婦の生活が描かれる。
ジェシーは行方不明となっており、事故なのか、誘拐されたのかもわからないまま、普通の生活に戻りつつあるサラとフィルの様子が描かれる。
視聴者としてはジェシーの行方が気になるところだが、その辺りはあまり語られず、この映画ではサラとフィルの壊れゆく心に力点を置いてストーリーが展開していく。
サラ役のオリヴィア・ワイルドの演技が絶望と希望の狭間で揺れ動く感情を見事に表現しており、素晴らしかった。
物語の中盤で、サラは自分が教師を務める学校でアダムという生徒に出会い、ジェシーの面影を重ねるようになる。アダムが里親から虐待を受けていることを知ったサラは、彼に寄り添おうとする。
一方、フィルはグループセラピーに出席しながらも、事件のことが忘れられず、ガソリンスタンドに立ち寄る日々が続いていた。
(以下、ネタバレ)
最後にジェシーが無事に保護されるのではないか、と仄かな期待を抱きながら最後まで観た。
が、終盤でジェシーが既に死んでしまっていることを示唆するシーン(農場で発見されたジェシーの服がフィルに返される)が映され、サラとフィルは絶望に打ちひしがれ、救いのないままエンドロール。
正直このラストは辛すぎる。
単純に映画としての面白さにも欠けるといわざるを得ない。
せっかくアダムという少年を登場させているのだから、何らかの形で夫婦の再生につなげてほしかったところ。
視聴者はサラとフィルの苦悩を追体験させられた挙句、絶望の淵に落とされて終わるという何とも後味の悪いラストとなっている。
感情を揺さぶられる内容ではあるものの、何ともやりきれない気持ちが残る映画だった。
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ミッシング・サン
(劇場未公開 リリース日:2016年10月12日)